前回のシミュレーションではあれだけ入り口でお得だ、節税だと言っていたイデコでしたが、実は出口で同じだけ税金を取るという、表向きだけは税金を安くすることをアピールして、何十年後かに同じだけ搾取するような仕組みだということがわかりました。
ですが、国がそんな国民を騙すような仕組みを作るでしょうか。それも、ちょっと調べれば素人でもわかるようなことなのに。
実は、イデコには受け取り方が様々です。
また、控除の方法も人によって様々なので、そのことをしっかり知った上でなるべくお得になる方法でイデコを受け取らなければ、もったいないことになってしまいます。
前回のシミュレーション
今回はケースその2として、イデコの受け取り方を色々見ていきたいと思います。
イデコの受け取り方 一時金として受け取る。
一時金として受け取るイデコのシミュレーションを始める前に、前回のシミュレーションを整理しておきます。
条件:
現在40歳。年収650万円の公務員。
40歳~60歳までの20年間確定拠出年金に加入。掛け金は最高額である月12,000円。
年率3%で運用した結果を色々な方法で受け取ることを考えたい。
退職金は2000万。勤続36年で退職予定。
60歳から65歳は関連の職場で嘱託として働く予定なので、イデコは公的年金等控除の額が広がる65歳から10年かけて年金のようにもらう。
65歳からの厚生年金の額は、国民年金と併せて18.5万円。(大体そのぐらいかと)
この条件で計算すると、イデコに入ることで得られる非課税分のメリットが57万円。ただ、このイデコを普通に年金として受け取る時に支払う税金も57万円と、まったくお得感がありません。
むしろ、イデコの掛け金は60歳まで使えないお金なので、むしろマイナスでした。
ケース2として一時金として受け取っていくことを考えていきます。
ここでの一時金とは、税法上退職金と同じ扱いになります。
60歳で退職する時に貰える2000万円にプラスしてイデコを受け取ることが出来ます。
前回のシミュレーションで、年率3%でイデコを運用できた時、386万円になることが計算でわかりました。
退職金+イデコ(一時金)=2,386万円を一気に受け取ることになります。
それだけの額にかかる税金を大きそうですが計算していきます。
金属20年以上働いた方の退職金控除額は以下の計算式でした。
勤続20年以上の場合
退職金控除額=800万円+(勤続年数-20)×70万円
これを計算すると退職金控除額は1,920万円になります。
もらえる退職金は2,386万円なので、
2,386万円ー1,920万円=466万円
この466万円を1/2にしたもの、233万円が退職金課税所得になります。
この退職金については、他の収入とは別で加算されますので、60歳以降働いていてもこの税金に変わりはありません。
233万円の課税所得に対して、所得税は10%になりますので、
233万円×10%-97500(控除額)=13万5500円。
住民税が10%とすると
233万円×10%=23万3000円
よって足し合わされた支払う税金は36万8500円となりました。
ただ、退職金のみで受け取った時の税金は計算してみると6万円ほどです。
(これらについても第三回で計算しています。)
イデコ分が追加されたことで30万8500円の税金が増えたことになります。
入り口での非課税分57万円に対しても約26万円ほど支払う税金が少なくなることがわかりました。
ですが、26万円の利益で60歳まで使えないお金を毎月1万2千円ずつ貯め続けるのはどうでしょうか。
イデコはお得!というには掛け金300万円を20年かけて26万円+というのは少しさみしい感じもします。
これが一番お得な受け取り方?ケース3イデコの出口戦略の裏技
イデコは年金として受け取るよりも、一時金として受け取った方が、支払う税金が少なくなるということがわかりました。
ですが、実はケース2ではまだ使っていない控除があります。
それはケース1で使っていたので、その控除を使用したところで損になると思っていたのですが、イデコの受け取り方によって、その控除額を最大限に使う方法があります。
ケース3 退職金を一括でもらい、イデコを年金+一時金で受け取る。
通常、退職金にしてもイデコにしても、一時金として退職金をもらい、控除できない分の残りを年金でもらう。という考え方でしたが、イデコの受け取り方には、
年金でもらった後、一時金として受け取る。
という方法を取ることができる運営管理機関もあります。マネックス証券、SBI証券は可能と確認済。(時代、制度によって変更があるかもしれませんのでご確認いただければと思います。)
そうなるとどうなるかを、今までの条件に当てはめていきます。
まず退職金は一時金として一括で受け取ります。
前回のケースと同様に勤続36年。退職金は2000万円として計算すると。退職金を受け取る際に払う税金は6万円でした。
続いてイデコを60歳~65歳までの5年間年金として、毎年70万円未満になるように受け取ることにします。
次の表を見て下さい。
年金を受け取る人の年齢 | (a)公的年金等の収入金額の合計額 | (b)割合 | (c)控除額 |
65歳未満 | (公的年金等の収入金額の合計額が700,000円以下の場合は所得金額はゼロ。) | ||
700,001円から1,299,999円まで | 100% | 700,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 | |
65歳以上 | (公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円以下の場合は、所得金額はゼロ。) | ||
1,200,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,200,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
国税庁HP:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_1.htm
前回も出した、公的年金等控除の計算をするための表なのですが、
60歳~65歳の間は年金の控除が65歳以降よりも少ない、だから65歳以上で年金を受け取った方がいいよね!となっていたのですが、60歳~65歳の間でも、70万円未満であれば控除額内となり非課税です。
イデコの掛け金+運用益は386万円でした。
そのうち350万円を5年間で70万円ずつ非課税で受け取り、残りの36万円を一時金として受け取ります。
この場合、この36万円が一時金になるのか、それとも年金の扱いになるのか、正直わかりません。
マネックス証券の方は一時金として受け取れると思う。と言っていましたが、”思う”の辺りに不安が残ります。
今回はこの36万円は一時金として受け取れるとして、計算していきますが、年金として扱われていてもそれほど大差はありません。
注意すべき点としては、36万は一時金ですが、退職金控除は退職金を受け取る時に使い切ってしまっているので、ここでは使えません。
退職金控除は使い切っているので使えませんが、一時金としての扱いは残りますので、課税所得は1/2になりますので、18万円になります。
それにかかる税金は所得税+住民税はおおよそ2万7千円です。
一時金は給与などの所得とは別に計算されますので、所得税5%、住民税10%で計算しました。
これでかかるイデコにかかる税金は2万7千円まで減らすことが出来ました。
入り口で非課税になった分は57万6千円でしたので、約55万円イデコを利用するとお得ということになります。
もし36万円が年金としての扱いになった場合はその時の収入にもよりますが、倍の6万円ぐらいにはなってしまいます。
ですが、当初に比べるとかなり節税できることがわかりました。
違う側面から話をすると、イデコの出口戦略によっては55万円もの差が生じてしまうということになります。
少し怖い話ですね。
年金+一時金の受け取り方はイレギュラー?
ただし注意点もあります。
一番大きいのは、イデコを年金として受け取った後に一時金として受け取る制度が運営管理機関にあるかどうか。
この点はしっかり確認する必要があります。
有名な運営管理手数料が全て無料の3社を比較してみました。
それぞれイデコの受け取り方の記載は以下のとおりです。
SBI証券 年金の受け取りは最長10年 年金か一時金どちらかでしか受け取れない。
楽天証券 年金を5年~20年の期間で選択可能 年金か一時金か併用可能。
マネックス証券 年金を5年~20年の期間で選択可能 年金か一時金か併用可能。
うーん。よくわかりません。(一時金は原則60歳で受け取る必要がありそうです。)
よくわからないので、直接マネックス証券さんに聞いてみたところ、
年金として5年受給すればその後残りの金額を一括受給が可能とのことでした。
この一括受給が一時金なのか年金として扱われるのかで税額が変わってきますが、
残っている額が少額なので、大勢に影響はありません。
ちなみにSBI証券さんでも同様な答えでした。一時金と年金の併用はできないが、上記のような受け取り方はできるようです。
人それぞれ、様々なケースで計算してみます。
今回のケース3まで計算してみましたが、あくまで最初に提示した条件に近い方がこのような計算になるということです。色々なケースを見ていきます。
このパラメータを変化させていきます。
一番怪しいのは運用益3%なのですが、これはまた別の機会にしまして^^;
退職金こんなにもらえないよ・・・
という人はどうでしょうか。
退職金1000万円、40歳からイデコ加入、年収500万、
定年になると勤続36年、イデコの掛け金が月3万円、運用益3%
ケース3との違いは、
退職金の金額:2000万円→1000万円
掛け金:1万2千円→3万円
へと変更しています。
この場合、掛け金がかなり大きくなりますので、運用による成果がかなり大きくなります。
イデコの掛け金は20年間で720万円にもなりますが、年率3%とすればで970万円に増えます。
ですが、退職金控除がかなり余ってきますので、ほぼ相殺。
計算してみると50万ほど余りますが、これを年金のもらえない(もらわない)60歳~65歳の5年間で受け取りをすれば、
公的年金控除で全額控除され、イデコに加入したことで増える税金は0円です。
イデコをした時としなかった時の差は非課税分だけで240万円程度お得になります。
このケースに近い方はかなりイデコの税制を有利に使える方です。
退職金がたくさん、その分給料もたくさん。
一方で退職金が3000万円と多い場合はどうでしょうか。
退職金3000万円、40歳からイデコ加入、年収1000万、
定年になると勤続36年、イデコの掛け金が月3万円、運用益3%
として計算してみます。
この場合、年収に対してかかる所得税が大きいですので、非課税になる金額は多くなります。
一方で退職金の額が多く、退職金控除を使い切ってしまうため、イデコで控除されない部分が多くなります。
なるべく税額が控除できるケース3を想定して計算してみましたが、結果としてイデコをする場合と、しない場合とでは70万円ほどイデコをしたほうが得になります。
ただ、同様に先程の月3万円をイデコに入れるケース(240万円)にも関わらず、年収や退職金の額によって、70万円とかなりお得度が減ってしまいました。
このように退職金が多くもらえる見込みのある方は、イデコで非課税になる分と出口で年金として貰いきれない分の税金額とを比較する必要がありそうです。
さてそれでは次の第五回の記事は、どこまで考えても未来はわからない。年率3%の妥当性。
を見ていきたいと思います。
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